の人生 徹底攻略法

架空のゲームの攻略本。衰退した攻略本文化に敬意を払いつつ…

赤ちゃんステージ【概要】

 ゲームは、きみが誕生するところから始まる。お母さんのおまたから、裸一貫、この世界にデビューすることになる。
 右も左もわからないきみは、こわくてこわくて、不安で泣くことになる。きみの初期能力はゼロに近く、本当にヒヨワ。虫よりも弱いぞ。あまりに弱いので、即ゲームオーバーになることもある(その場合は、もう1度キャラメイキングからやりなおそう)。
 運よく生きのびても、ゲームをスタートしたばかりのきみは、本当に弱い。自分一人では生きていけない。なにしろ、自分で動くことすら、まともにできない。だから、はじめのうちは、だれかに養ってもらうことになる。(誰かとは、お母さん・お父さんなどの家族、乳母、保育士、医者、孤児院の職員、看守、オオカミ、誘拐犯、赤の他人など)
 「ゲーム全般の流れ」でも説明したけど、ゲームのスタート直後は、1日の約70パーセントを睡眠に費やすことになる。それはゲームの仕様であって、バグではないから、不安に思うことはないぞ。ねむってるあいだも、「夢」を見て楽しめるから、とくに退屈をすることもない。思うぞんぶん、ねむるがいい。
 ゲーム序盤であなたがするべきことは、ねむるだけ。あとは乳を飲むだけ。たまにシッコやウンコをもらして、だれかに処理してもらうだけ。ウンコ製造機として、せいいっぱい、がんばってください。
 自分で操作できなくて、つまらないかもしれないけど、きみのキャラクターは、実はめまぐるしい成長を、とげているんだ。
 まず、乳を飲むことで、からだが成長していく。体重がふえ、身長もすこしずつ伸びていく。髪の毛がはえていく。首が安定する。
 そして、まわりのおとなの会話を聞くことによって、「ことば」をおぼえるぞ。ことばは、その社会における基本的なコミュニケーション手段。まだ自分から話すことはできないけど、聞くことはできる。文法という、もっとも大事なルールは序章で身につけることになるから、まわりのおとなに、たくさん話しかけてもらおう。もしくは、おとなの会話をぬすみ聞きしよう。そのうち、自分からも話すことができるようになるかもしれない。
 ゲームオーバーにならずに成長をつづけて、離乳食を食べられるようになれば、こっちのもんだ。乳以外の、おいしい食べものが食べられるようになるぞ。食事は、『の人生™』においてとても重要な習慣であり、プレイするうえでの最上のよろこびのひとつでもある。そのうち、歯がはえていき、かたいものも食べられるようになる。
 きみのからだは成長を続け、やがて、すわれるようになる。はいはいをしたり、立ったり、二足歩行もできるようになる。こうなれば自分の意志で移動することもできる。ただし、むやみに行動すると、ゲームオーバーになる確率も格段に高くなるから、その点は注意して。
 こうして、ゲームの序章にあたる「赤ちゃん」の時代をきみはプレイしていくことになる。すこしずつ、ことばと、世界のしくみ(物理法則など)と、からだから発せられるサイン(痛みや空腹や便意など)をおぼえていこう。

【コラム:このステージのハイスコア保持者】
 釈迦 a.k.a. ゴータマ・シッダルタ。
 生まれ持った「運」の高さで王子としてスタート。お母さんのおまたではなく、わきの下から誕生した。スタート直後に7歩歩き、「天上天下唯我独尊」と言葉を発した。これは異常な早熟。通常、自力での歩行はレベル1になってから。「天上天下唯我独尊」とほざくのは、レベル14で「中2病」を発症してから。いかに初期能力値が高かったか、わかりますね。
 その後、浮き沈みを経験しながら、最終的にはみごとカンスト(9999点)を達成した。